コロナ禍での国家試験の受験対策

 

  秋風が身に染みてくると、国家試験の足音が聞こえてくる。医師をはじめ看護師、保健師等の医療従事者の国家試験が1月から3月にかけて実施される。
 私が関与する作業療法士の国家試験は、第56回として、令和3年2月21日(日曜日)(厚生労働省HP,https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/sagyouryouhoushi/閲覧日:2020.10.7)に実施される。同日には、理学療法士の国家試験も行われる。
ただ今年は、新型コロナウイルス感染症のことがあり、どうなるのか心配である。現時点で分かっていることだけでも、例年と若干事情が異なるので、受験生に向けて注意点をまとめておきたい。
  なお、全て調べたわけではないが、日にちが違えど、他の医療従事者の試験の扱いも同様であろう。

願書の提出方法

例年、理学療法士、作業療法士の国家試験の願書は、12月下旬から1月上旬に提出期限が設けられる。第56回は、令和2年12月14日(月)から令和3年1月4日(月)までが期限とされている。願書の提出は、指定された事務所への直接持参も可能とされているが、「新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、郵送による手続きを推奨しています」とされている。
受験者の皆さんも、持参することで安心感があるやもしれないが、道中で感染症をもらう確率がゼロではないことを考えると、推奨どおり郵送で行うほうがよい。

厚生労働省医政局医事課長からの文書

令和2年10月1日に医政医発1001第4号として、「第56回理学療法士国家試験及び第56回作業療法士国家試験の実施について」という文書が、厚生労働省医政局医事課長から養成校の長に向けてだされた。詳細は、原文を取り寄せご覧いただきたい。
この文書では、願書の記載例や提出方法、期限、受験時の注意点などが記載されている。
例年さほど内容は変わらないが、今年は、「6.その他」に以下のように加筆されていたことが印象的であった。
 印象的な加筆①は、試験場では昼食時等を除き常時マスク着用することと体調不良時は、必ず申し出るようにとの注意喚起である。この注意喚起は、受験生として会場でしっかりと守った方がトラブルがなくてよいので徹底してもらいたい。
 印象的な加筆②は、「次に該当する受験者は、他の受験者への感染の恐れがあるため、受験を認めない旨指導されたいこと。」とあった。次とは?
 「ア 新型コロナウイルス感染症に罹患し、入院中、宿泊療養中または自宅療養中の受験者」
 「イ 保健所または検疫所の指示により、試験日時点で自宅等での待機を要請されている受験者」
どういうことなのか?
 つまり、本人が、国家試験日の当日に、新型コロナウイルス感染症にかかっている場合は試験が受けられない。そして、イの自宅待機の要請は、新型コロナウイルス感染症患者との濃厚接触者に受験者がなった場合に該当する可能性がある。
文書を読む限り、受験者は、国家試験直前から当日にかけ、自分自身が感染してもならないし、濃厚接触者になってもならない
 さらに、気がかりなのは、通知文書はここで終了しており、再試験や追試験の話は全くない。
 資格は全く異なるが、司法試験当日に新型コロナウイルス感染症が疑われ自宅待機を要請された受験者の記事などを読んでいると、救済措置はなかったようだ。出展:「もしコロナだったら…」で司法試験を断念、救済措置は?SankeiBiz,2020.8.13

 理学療法士作業療法士国家試験でも、当日受験できなければ、追試験はないものと思っておいた方が良い。厳しいが、翌年度に再び受験することになろう。

コロナ禍での養成校と受験生の対応

1)養成校

 養成校は、受験者の学力アップを図りつつ、新型コロナウイルスにかからないようにするための徹底した指導が必要である。
 学力アップのために過去、国家試験当日近くまで校内で缶詰にして勉強させていた養成校もあるであろう。今年は、NGである。国家試験1か月前までにある程度の学力の目途をつけるように学習計画を作り、試験日まで1か月を切れば、受験生を呼び出すことはあってはならない。オンラインでの学習なども駆使して、感染リスクの排除に努める必要がある。

2)受験生

‣学習の進め方

 養成校の指導に従いつつ、試験日当日まで1か月を切れば登校して学習ができないことをあらかじめ念頭に、例年の先輩たちよりも計画を前倒しして学習を進める必要がある。例年よりも自宅学習が始まるのが早くなるということは、教員の目も届きにくくなるということである。より自制が必要となる

‣罹患しないために

 感染症に罹患しないように、試験日当日まで1か月を切れば、不要不急の外出をせず、感染予防策を徹底して実施しなければならない。こうすることで、自身が感染するリスクを徹底的に下げるのである。図書館やファーストフードの店で勉強をする学生さんも見かけるが今年はNGである。

‣濃厚接触者にならないために

 もう一つ覚えておかなければならないのが、新型コロナウイルス感染症患者との濃厚接触者になっても、受験ができない可能性があることである。万が一同居家族から新型コロナウイルス感染症患者が出れば、受験者は濃厚接触者になってしまう。
 対策として、独居を試みるのもこの際、よいかもしれない。しかし、これまで一人で暮らしをしたことがないものへ、急に独居せよといっても、別の弊害が出ることが目に見える。
 家族と同居しつつ、万が一の時に濃厚接触者にならないために、自宅内でもできる限り個室にこもることを心がけ、できれば食事も別で行う。さらに、同居者と一緒になるときはゴーグルとマスクを着用しておくのである。マスクに加えゴーグルもしていると濃厚接触者から外される可能性が出てくる。
 以上を徹底していただき、今年度の受験者が、感染症が原因で受験ができず1年を棒に振ったということがないようになることを祈るばかりである。

本記事は、文書を読みつつ個人の責任で書いたものであることをご了解のうえ、読者自身の責任もとで参考にしてください。

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