統合と解釈・考察の違いと書き方

  

 作業療法の実習では、患者の基本情報を要約し、観察や面接、検査の結果、日常生活活動などの情報を列挙した後に、統合と解釈および考察を書きます。よく、考察は自分の考えを書きなさいという指導者がおり、少なくとも私はそう言われ続け、「考えって何?」と思い続け、結局何を書けばよいのかよくわからない、悶々とした日々を過ごしました。
 そのような経験から、この記事では、考えを書けといわれてもなぜかけないのかを説明したうえで、”統合と解釈”と考察の違いとそれぞれの書き方について述べておきます。
 書き方のテクニックだけを知りたい方は、前半は飛ばして読んでいただいて構いません。 

考えを書けといわれてなぜかけないのか

 統合と解釈について書きなさいといわれ、路頭に迷っていると、「患者さんの全体像を書けばいいんですよ。言い換えるならば、評価のまとめです」といわれます。そして、「考察は、自分が思っていることを書けばいいんです。自分の考えですよ。」といわれます。やっぱりわかりません。
 いわれるとおり、統合を解釈のところで、前半部分で書いた評価内容を短くまとめて書くと、前で書いている内容を繰り返して書いても仕方がないといわれます。
 考察については、何も書けません。そもそも考えを書こうを思うと、なにかの観点が必要だからです。何らかの問いがあって、その問いに対して、自分はどんな材料を使ってどのように考えるのかということをはじめて書くことができるのです。
 これまでに考えについて書くための思考過程を教えられたり、トレーニングしてこなかった学生さんが、考えを書くようにいわれて路頭に迷う原因ではないでしょうか。

統合と解釈

 1)統合と解釈とは

 統合と解釈のことを評価のまとめと呼ぶ人がいることはすでに述べましたが、このようにいっている人の意図しているところは、評価内容をただ短く書くことではありません。それなのに、まとめるための視点をいわずに、安易にまとめといっておられるように、私は思うわけです。全体像という言葉も同様です。
 ここで書くことは、タイトル通り、評価したことを”統合”し、その内容を客観的に”解釈”するのです。

 2)統合と解釈の書き方

 作業療法評価の観点で統合と解釈とすることになると、患者の主要な一般情報が述べられ、なぜ作業療法の対象になっているのか病状や本人・家族の思い、元の生活に戻るための課題や患者の思いが達成できていない現状を端的に書きます。さらに、その課題を説明すべく、心身機能のプラス因子とマイナス因子を書きます。
 そして次がポイントです。活動の制限が列挙されますが、その制限が生じている原因を心身機能で挙げた内容とリンクさせ示すのです。さらに、参加についても同様で、心身機能と活動のプラス因子マイナス因子とリンクさせてうまくいっていない部分を理由付け(解釈)するのです。
 さらに、環境情報や個人の因子をいれつつ、課題達成ができていない原因を解釈し、作業療法で介入すべきポイントを示します。
 単に評価内容を短くして因子を列挙したものだと繰り返しの記述といわれますが、因子をリンクさせ作業療法で取り組むべき介入ポイントを解釈していると、同じような因子を使っていても全く異なった記述になるわけです。

考察の書き方

 考察は、統合と解釈を踏まえ、課題達成のために作業療法士が何ができるのか、何に目標を置くのが妥当かを理由を添えて書きます。そして、目標達成のためのプログラムを行うとなぜ目標が達成できるのか、根拠(考え)を書きます。さらに、課題解決をして今後どのようになってもらいたいと療法士として考えているのか、自分の書くところです。
 考察は、患者さんへ療法士である自分が用意したプログラムを実践してもらうための説明の拠り所となります。拠り所ですので、エビデンスを考慮した組み立てが必要です。
 統合と解釈は、客観性が特に重視されますが、考察については、偏りすぎては問題となりますが、療法士それぞれが思いが入ってよいとされています。ゆえに、療法士の力量も問われますし、療法士が大切にしたいと思う患者のこだわりへの対処の仕方についても大きく差が生じます。

コメント