【不思議な筋】伸筋なのに屈曲に働くの?(国試対策)

 


 理学療法士、作業療法士の国家試験では、筋肉の作用に関する問題が、1問~2問程度、毎年出題されています。受験生であればご存じかと思いますが、筋肉の作用は身体のポジションによって異なります。国家試験では、そこを巧みに突いて、受験生の理解を計ってきますのでしっかりと押さえておきたいです。

筋肉の作用とは

 筋肉は、関節にまたがって付いています。筋肉が縮む(収縮する)と関節が曲がったり(=屈曲)、伸びたり(=伸展)します。ほかにも、横に開いたり(=外転)、横から閉じたり(=内転)、外に回ったり(=外旋)、内に回ったり(=内旋)します。そして、それぞれの動きには、屈曲-伸展、外転-内転、外旋-内旋というように名前がついています。
 筋肉の作用とは、筋が縮む(収縮する)ことによって、関節がどのように動かすのかを指す言葉です。例えば、筋肉の収縮によって屈曲した場合、その筋肉の作用は屈曲となります。筋肉は、通常特定の作用をもっているわけです。

主導筋と拮抗筋とは

 動きについて書きましたが、動きには、曲がると伸びるというように相反するものが存在します。屈曲の反対は伸展、外転の反対は内転、外旋の反対は内旋です。
 主導筋とは、動きをメインで行う筋肉のことをいいます。
 例えば、Aという関節を屈曲をメインで行う筋肉は、その関節の屈曲の主導筋と呼び、その動きを手伝う筋肉を補助筋といいます。逆に、Aという関節の伸展(屈曲の反対の動き)を行う筋肉を、拮抗筋と呼びます。

主導と拮抗の役割が転換する筋

 人間は、いろいろなポジションをとります。肘関節でいえば、手のひらを上に向けたまま(=回外位)肘を曲げることもできますし、手のひらを前に倣えのポジションのように内側に向けて(=中間位)肘を曲げることもできます。そして、手のひらを下に向けて(=回内位)曲げることもできます。
 通常、筋肉は、ポジションが変わっても筋肉の作用はさほど変わりません。しかし、働き方が変わったり、作用が変化するものがあります。

 1)関節のポジションに応じて働きの頻度が変化

 肘関節の屈筋といえば、メインは、上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋です。これらは、すべて肘関節の屈曲に働き協力関係にあります。ただポジションが変わると、メインで働く筋肉が異なります。
 それぞれ、上腕二頭筋は前腕が回外位の時、上腕筋は回内位、腕橈骨筋は中間位の際にメインで働きます。筋肉は、関節のポジョンに応じて働きの頻度が変化しています。


 2)関節のポジション変化で作用が逆転する筋

 手関節を可動する筋は、肘関節に対して補助筋として働きます。
 その筋肉とは、次の通りです。
 橈側手根屈筋、長掌筋、尺側手根屈筋は、上腕骨の内側上顆から起始し、肘関節をまたいで走行し、さらに手関節をまたいで手根骨や手掌面に停止します。これらの筋肉は、肘の前面を走行しているため、収縮すると肘を屈曲させます。
 長橈側手根伸筋、短長橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、指伸筋は、上腕骨外側上顆から起始し、肘関節をまたいで走行し、さらに手関節をまたいで手根骨や手背面に停止します。人体が解剖学的肢位(回外位)をとっている場合、これらの筋肉は肘の背面を走行するので、肘関節の伸展を補助します。
 しかし、前腕のポジションを変えると、作用が変化する筋肉が存在します。それが、長橈側手根伸筋です。前腕を回内位にすると、この筋は肘関節の前面を通過するようになります。したがって、ポジションが変更されると肘関節の屈曲に働ます。もちろん回外位の時は肘関節の伸筋として働きます。伸筋なのにポジションが変わると屈曲に働く興味深い筋肉です。
 ただ、この筋肉の作用が国家試験に出題されると、受験生の中の一部の人は迷ってしまいます。そうした意図もあってか、過去、数回出題されています。


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