訪問リハビリは稼げる?理学療法士・作業療法士の転職先

 


今日は、理学療法士・作業療法士の今後の賃金と転職する先としての訪問看護ステーションについて考えたいと思います。稼げるのか、持続的なのかといったに焦点を当てました。

理学療法士・作業療法士の年齢ごとによる賃金

  1)初任給

 理学療法士・作業療法士は、高等学校を卒業後、国家試験の受験資格を得るために、養成校に通い卒業する必要があります。3年制と4年制があり、専門学校もあれば短大、大学があります。いずれかを卒業すれば、国家試験受験資格が得られ、国家試験に合格し免許登録をすれば、療法士となります。
 高等学校卒業後すぐに養成校に入り、3年で卒業すれば21歳で社会人となります。令和元年賃金構造基本統計調査による0年目いわゆる初任給と1年目の年収平均は次の通りです。


 この額が、少額か高額かは、意見の分かれるところですが、専門学校卒・大卒の初任給としては、他の業界と比べても決して悪くありません。ただし、奨学金の返済などがある方からみると、少額といわざるを得ません。

  2現段階での年齢別賃金

 初任給は決して悪くありませんが、問題は年齢を追うごとでの賃金の伸び率です。
 次の表は、同じく、令和元年賃金構造基本統計調査のデータを用いた40歳代、50歳代の理学療法士・作業療法士の平均年収です。


 40歳を超えてくるとそれぞれの所属施設で役職がついた、昇給した、転職を行い給与の上乗せがあったなどが考えられます。その結果、500万円台になっています。
 ただ、一般企業の課長職、部長職ともなると700万円以上のところもあることを考えると、理学療法士・作業療法士の年収の年齢を積み重ねることでの伸び率は、決して大きいとはいえません。
 ただ、この伸び率は、当然といえば当然なのかもしれません。理学療法士・作業療法士は、患者や利用者へ診療したりサービス提供をすることで、診療報酬や介護報酬制度から費用をもらっています。この費用はサービス内容に対してほぼ一律で、1年目の療法士が実施しても15年目のベテラン療法士がしても同額です。
 こうした事情から、年齢を重ね技術力がアップしたからといって、右肩上がりに賃金を引き上げていては経営が成り立ちません。むしろ、同じ報酬なら賃金が低くてすむ若い療法士を経営者側は雇いたくなるでしょう。
 男女で年収の開きが50万~100万円程度あり、男性の平均年収の方が高いです。おそらく、役職についている男性の割合が女性よりも大きい、女性職員は産休育休で一時的に休職し昇給が滞る時期があった、女性職員の方が非常勤率が多いといったことから生じているものと思われます。

理学療法士・作業療法士を取り巻く需要供給の問題

  1養成数と需要と供給の逆転

 厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会の理学療法士・作業療法士分科会(平成31年4月5日開催)において、「理学療法士・作業療法士の需給推計(案)においては、PT・OTの供給数は、現時点においては、需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍となる」とされました。
 2025年が団塊の世代が75歳を迎えるため、医療・福祉のおけるサービスの必要量がピークとなるといったこともいわれてきました。2025年を前に、理学療法士・作業療法士の毎年の養成数は、理学療法士が約12000人、作業療法士が5000人であり、医療機関と介護保険施設が主な受け皿となる現状の体制からみると、やや供給過多かもしれません。

  2)過剰供給の行き先

 このまま供給過多へと傾いていくと、資格を取っても就職口がない療法士さんが増えてくるでしょう。こうした状況を先取りしてか、医療機関へ就職(所属)する率は、徐々に減少してきており、介護保険施設や株式会社への就職、起業をするといった動きもみられます。
 講演活動をしたり、Youtubeで発信したり、ブログを作成したりしている人もおられます。
 理学療法士・作業療法士の資格とプラスアルファの要素が必要な状態にすでになっているやもしれません。 今後この動きはより広がっていくでしょう。

転職先としての訪問リハビリ・訪問看護ステーション

  1訪問看護ステーションでのリハビリテーションの賃金とその秘密

 訪問リハビリテーションの求人、主には訪問看護ステーションからの訪問リハビリテーションの求人が多数みられます。一定の利用ニーズがあるのに対して、求職者が医療機関へ行く傾向もあって人手不足なのでしょう。
 これらのステーションの給与は、病院勤務よりも高く設定されており、「年収550万円」といったものもみかけます。医療機関で勤務しているが給与が頭打ちし、子どもの教育費なども考え、高い給与を求めて異動される理学療法士・作業療法士もいます。
 ただ、広告にある年収には注意が必要です。
 この額は、歩合制であることがほとんどです。1日に何軒も回り、件数及び加算をしっかりと稼いだ人の最高値を掲載している可能性があります。
 逆に歩合制を設けていないステーションは、年収設定は低いです。
 以前、エージェント(転職求人サイトのスタッフ)の人に聞いたことがありますが、都心部はほぼ訪問リハビリは飽和している。一方で山間部はまだまだニーズがある。しかし、山間部の利用者を担当すると移動時間が長く、十分な件数をこなせないのだそうです。
 こうした点も考慮しておかなければ、不安がある中、せっかく転職したのに、転職に失敗することになるでしょう。
 また、訪問看護ステーションでの訪問リハビリを利用する方の多くは、サービスを受けているとの思いが、入院患者さんよりも強いです。入院患者さんだからおろそかにしてよいわけでは決してありませんが、訪問リハビリでは、接遇、技術、ニーズに対応できるかという点を毎回みられています。気に入らなければすぐに利用を打ち切られることも頭に入れておくことが必要です。
 否定的なことが多くなってしまいましたが、私の教え子などは、作業療法士2年目で病院から訪問看護ステーションへ転職し、水を得た魚のように働いています。要は、自分に合うかどうかです。

  2訪問看護ステーションでのリハビリテーションへの風あたり

 すでに理学療法士・作業療法士として働いておられる方はご存じかと思いますが、訪問看護からの療法士の訪問は、訪問看護の一環として行われるものと制度上なっています。ゆえに、訪問リハビリテーションとは、異なる報酬体系になっており、高額に設定されています。
 その点を利用してか否かはここでは考えませんが、一部の訪問看護ステーションでは、看護の割合よりもリハビリテーションの割合の方が多いところもあるようです。この点が、2019年7月に行われた中医協総会で指摘されました。詳細は、中医協ニュース「理学療法士の多い訪問看護ステーションに集中砲火、「野放し状態」との声も」(2019.07.18)などをご覧ください。
 介護保険が2000年に始まり20年が経ちました。訪問看護ステーションも増加し、そこで勤務する療法士数も相当数増えました。療法士が訪問看護ステーションを立ち上げて運営しているケースも多くみられます。
 増えると、介護報酬の使い先として目立ってくるわけで、制度の適正化も議論されます。訪問看護ステーションからの訪問リハビリあくまで看護の一環とされています。療法士にとってより厳しい環境になるでしょう。

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